熊本県 八代市 泉町(旧泉村) 五家荘
メニュー
雑文録

2021.08.19

山行

8月7日にコロナワクチン1回目を接種した。事前に何か悪い予感がしていたのだけど、その予感が的中した。田舎の小さな町だから、接種会場に行くと知り合いばかりだった。中にはサポート役の人まで同じ町内の人で忙しく立ち回っていた。ワクチンの情報として僕の友人の半分に副反応が出た。40度近い熱が連続して出たとか、肩が数日上がらないくらい痛いとかいう人が多かったので、何だか嫌な予感がしていた。いよいよ自分の番、左肩に注射を打ってもらいその場で15分程度待機となり、その後、次の予約を確認するために椅子の列に並んだ。数分後、僕の体に異変が起きた。脳の中の血管がジーンと鈍く震え始めるのが分かり、体が硬くなる。これはいかんと看護師さんを呼び、別室で両足を上げ(意味不明)横になった。血圧が150を超えていた。お医者さん、看護師さん曰く「緊張されたのでしょう」とのことだったが、僕の普段の血圧は100前後なのだ。薬で抑えているのだけど。それがわずか15分で1.5倍の150を超えると、それはマズいでしょう、看護師さんと思った。車を運転していなくて良かった。幸い血圧が元に戻り帰宅、昼食。それにしてもなんだか左肩が硬く痛い。

 

そして夜。ふと、右の額に手をやると、ふっくら「たんこぶ」が!手のひらに包まるくらいの丸いたんこぶが出ていた。3年前にクモ膜下の開頭手術で開けた右の額の頭蓋骨の穴の上に、ぷくんとふくらみが出たのだ。この「たんこぶ」が出るのは年に2回程度。自転車を無理して漕いだり、忘年会で、大声で会話した夜に、彼は静かにやってくるのだ。素人考えだけど、一時的に脳の血管の血圧が高まり、脳の髄液が押し出され、骨のすきまから漏れ出し、皮膚にたんこぶを出すのだろう。この推理は脳外科の先生に話したが、先生は否定も肯定もしなかった。要するに原因不明との事。いちいちたんこぶくらいで開頭し、脳の血管を1本1本ピンセットでつまんで調べるリスクは誰も背負いたくない。間違って神経に傷が入ったら、どうなるか…そのたんこぶの髄液を抜くのも超危険だし、間違って脳内に細菌がはいったらとんでもない…まぁ原因不明で様子を見ましょう…何かもっと重大な危険が起こるまで、お互い様てな事なのだ。久しぶりの脳の膨らみを何度もさすりながら…これからどうなるか、いつものようにひっこめばいいが、どんどん膨らんだらどうなるか…夜中の薄暗がりの中で忍び寄る恐怖…。

 

翌朝、なんとか「たんこぶ」はお利口さんにも脳に帰っていった、ひとまず安心。※この体験は事実だが、こんな事象は僕のような、体質、極めて珍しい原因不明の症状の持ち主だからこそ語れる事であり。ほとんどの人に当てはまるわけではない。当然、何もない健康体の人であれば、100%僕はワクチンの接種をお勧めします。

 

翌8日は、地区のお宮の掃除となった、たんこぶくらいで地区の行事を休むわけにはいかない。蚊に刺されまくりながらも、朝8時から全員集合。鎌で枯れた草を刈り、集め捨てる‥‥前日、ワクチン接種で合わせたメンバーが心配してくれている。顔をひきつらせながら無事を装い、掃除に精を出し帰宅しシャワーを浴びる。さっさと早く寝る。

 

9日は祝日で、いつもの山に山野草の写真を山に撮りに行く。天気予報は雨のち曇り。台風前に撮るなら「今」しかない。五家荘の山野草の開花の時期は短い、キレンゲショウマ、ソバナ…、片道3時間の強行軍だ。峠では猛烈な風雨にやられる。“うわん、うわん”と暴風雨が吹き荒れる。樹々がそのリズムでたわみ、飛び散った葉や、木の枝が道に吹き散らかされる。これは持久戦じゃい。昼過ぎに、スッと雨風が止む。サッとカメラにタオルを巻き、花に近づく。雨に濡れ、杉木木立に、うつむく黄色いキレンゲの花とつぼみ。蜂が蜜を吸おうと、つぼみに忍び寄る。運よく、写真が数枚撮れる。奇遇にも自分の脳内のような、幾重にも小さな花が弾け、広がり白い花火を打ち上げたような、ぼんやりしたような、ふわりとした花(名前は忘れた)の重なりのアップが撮れた。またしばらくすると暴風雨。帰りにソバナに近づくと風が吹き止まない。雨に濡れた紫色の薄いガラスのような花弁が大きく首を振る。

 

「撮るなら今しかない」と言うのは「たんこぶ」のせいでもある。後遺症で右手の指先が少し震え、目もかすみ、写真のピントも合わない。①これは下手な写真撮る人が体調の悪さを理由にする言い訳の一つ。ただ、水平の感覚がおかしいのは間違いない。何度撮っても水平感覚が傾いて、右か左に傾くのだ。おまけに風で花弁が揺れて、揺れて…②これも下手な写真を自然のせいにする言い訳の二つ目。

 

まぁいい。誰かに褒めてもらいたくてシャッターを押すわけではないのだから。③これが最後。下手な写真撮る者の最後の開き直り。

 

逆にどれだけ上手いと評価されても、自分の気に入らない写真は写真。そんな写真を調子に乗って人前にさらすことは、みっともない。‥‥が、そんなこと言っていたら僕の写真は1枚もこうして五家荘図鑑に出せなくなるではないか!

 

震える指先でシャッターを押せば押すほど、何だか、シャッターを押す右手のひとさし指の先だけ取り残され、体が透明になってくる不思議な感覚がしてくる…吹く風が、体を通り抜けていく。

 

もちろん、8月28日予定の2回目のワクチンはキャンセルした。同じことが起こる可能性は高いし、短期間で「たんこぶ」が2度出る経験はこれまで受けたことがない。「たんこぶ」のことで頭がいっぱいになるより、山野草や、山の歴史のことで頭がいっぱいなる方が僕には幸せなのだ。

 

寝返りをうつ。

白鳥山が好き

分類
新着順
過去記事一覧
  1. ホーム
  2. 雑文録
  3. アケボノソウと、トリカブト