2022.07.10
人
コロナも多少鎮静化、ようやく博多行の新幹線に乗ることができた。2年ぶりの会議なのだ。(僕だって、時に仕事はする)。博多と言えばなつかしのシロキンさんだ。ドナリキンゾウさんだ。過去にバス釣りの連中を新聞のコラムで小馬鹿にして猛抗議を受け、釣竿を折る前に筆を折った我がヒーローなのだけど、城山さんの元部下の仲井さんに聞いても「生きてはいるらしいけど、まだ天神の河岸には顔をだしていないっすねぇ」ということだった。
以前、この雑文録でシロキンさんを全面的に支持したのだけど、いやいや、バス釣り軍団にも言い分はあるだろうと、その先鋒役のアウトドァの教祖、元フォークコンビ「あのねのね」のメンバー清水国明氏のバス釣り裁判の古書をアマゾンで買い、読んだ。その書名は「釣戦記(ちょうせんき)」というタイトルで、2003年発行初版。今から約20年前に、琵琶湖で起きたブラックバス論争の裁判をテーマにした本なのだ。
清水氏とその仲間は琵琶湖でブラックバスを釣り、キャッチ&リリースして「スポーツフィッシング」を楽しんでいた。そんな彼らに滋賀県、漁協などは外来魚のブラックバスやブルーギルらの食害…日本古来の在来種、鮎、わかさぎなどが外来種に食い荒らさて生態系が崩されているので、釣りの禁止とは言わんが「釣った後リリースするのは止めて、外来魚ボックスに入れて処分してね、処分しなさい、処分せえ!」と言われて清水さんたちは、「ワイらの勝手じゃボケ!」「外来魚も命や、逃がして何が悪い」「ワイらにも釣りを楽しむ権利があるんじゃい!」と言い返し、結果清水さんが裁判を起こしたのだ。
その記事を見たからか、我がシロキンさんは某全国紙の釣りのコラムで清水さんたちを「馬鹿じゃないの、コノシトタチ」と馬鹿にした。更にバス釣りの道具のメーカーにも「昔の鍛冶屋魂の矜持はないのか!」とあおったのだ。
シロキンさんのコラムを読んで、全国のバス釣り仲間は一斉に動き、掲載した新聞に猛抗議。シロキンとは誰じゃい?と探しまくったのだ。清水氏の本を読むと、当時は清水さんたちにも「自然破壊、環境破壊主義者」などと、ものすごい抗議が全国から寄せられた。清水さんは、そういう肩身の狭いバス釣りファンの代弁者でもあったのだ。シロキンさんをリンチしょうとした、バス釣りグループも、清水さんをつるし上げた自然愛好者グループも精神構造は同じというわけか。
結果、清水さんの裁判は敗訴。一応法に従う結果になった。ところが清水氏の釣戦記によれば当時、他の地域では地域振興のために「どんどんバス釣りOK!みんな来てね」という地域もあり、更に、琵琶湖の環境破壊の大きな原因は、滋賀県の開発許可の乱発で観光施設が湖を埋め立て、湖水は汚染されたのも在来種の減少の原因であるとデータが示されたり、その乱開発を黙認して補償金をもらっている漁協の利権まで、清水氏は裁判で訴えているのでありました。
自然保護か観光開発か?この悩ましい問題は今も同じ。もちろん、僕は「お金儲けが目的の」外来魚の無断放流は自然破壊、観光破壊でもあり、そんな輩を見たら後ろから川に着き飛ばしてよいという法律を作って欲しいと思っている。つまり一番の理想は「自然を保護しながら、観光振興」が一番なのだ。残念ながら、今も「自然を破壊し、コンクリートで護岸工事をしながら、観光振興」をしている勘違い自治体が多いのだけど。ついでに言えば「自然に何の関心もない(夜に屋外で飯食うだけの)、ブームでやってくる都会人の為に豪華な観光施設を建て、結果大赤字をくらう自治体」も多いのだけど。
清水氏の裁判で更に明らかにされたのは、滋賀県の漁協は外来魚駆除費を行政から莫大にもらい、ついでに漁協連合会会長とその仲間は、工事で川が汚染されたと虚言を繰り返し、金銭を要求し逮捕されたりしたとのこと。
また不思議な事に、外来魚の数は駆除しなくても年が経つほどに激減しているというデータも出た。皮肉な事に漁協は有害な外来魚が減ってしまうと困るわけなのだ。最初は嫌いだった清水氏を、まあ「がんばってはるなぁ」と僕も同意する点が出て来た。「何でもかんでも100%あいつが悪い、自分が正しい」という思考停止は危険なのだな。釣戦記を買うまで僕の脳も100%侵されていた。
今、いろんな通信機材は進化したけど、その分、ヒトは脳は退化したのだ。ネット下では考えの違う人を過激に批判、攻撃、封殺する脳が増殖してきた。
ところで、熊本市内の我が事務所の近くに「江津湖」という市民の憩いの小さな湖がある。
阿蘇の外輪山からの地下水が湧き出て、(熊本市内の水道水は地下水でとても美味、ダムの有る自宅の町の水道水は飲めたものではない) 常時、地下水が流れたくさんの魚が泳いでいる。江津湖にも残念ながら、ブラックバスなどの外来魚が棲み、以前はおしゃれな恰好をしたバス釣り愛好家が川岸を歩いていたが最近少なくなった。いったん「キャッチ&リリースされて痛い目にあった魚も賢くなり、そういう魚は警戒心が強く、なかなか釣り上げる事ができないのでブームが去ったのか。
僕も時に、その市民の憩いの湖に行き、アイスを食べながらぼーっとしているのだが、ある日、その途中の疎水(コンクリートの水路に)に大きな口を開けパクパクしている魚の姿を見つけた。時に親子で楽しくその汚れた疎水を泳ぎ楽しそうだ。上から見ても全然警戒しない。目がクリクリして可愛~い。そうして眺めていると、1匹2匹…仲間も加わり、5匹10匹‥合流し、ぶわーっと大群!浅い場所では背びれが水面からで、100匹は超える大群をなし始めた。その名は「ティラピア」成魚で大きさ30㎝、戦前、食糧難対策で輸入されたらしい。彼らの捕獲に釣りは不要。スーパーの買い物かごで上流、下流で挟み撃ち、大捕り物が出来る。
熊本市の担当部署に電話で聞いてみる。外来魚を管理するのは江津湖であり「その周辺の疎水ではなかとです」と答えやがった。すでに彼らはティラピア軍団のことは知っているのだな。面倒な事には関わりたくないのだ。(ぼくのような面倒な人にも)
釣戦記の清水さんに教えを乞うべきか。しかし彼らの主張は外来魚にも命がある「殺さずにキャッチ&リリース」して何が悪いというものだったし、江津湖の数100匹は生息するクリクリ目玉の「ティラピア軍団」にも命があるのだとしたら、どうしたらいいのか?
自然保護か、観光開発か?在来種保護か、絶滅か?
漁協の利権保護 (実際川漁師でなくても漁協員となれるらしい) か、河川の自由化か?
五家荘で言えば、自然保護か?森林開発か?
登山者保護か?トレイルラン排除か?
街のど真ん中、江津湖でも悩ましい問題は今も同じなのだ。
一人だけ、答えを出した人が居て、
僕が敬愛する、カヌーイストの野田友佑さん。野田さんはキャッチ&リリースには否定的で、野田さんの名言、釣った魚は「キャッチ&塩焼き」すると書いた。
(※ついでの名言、「グダグダ抜かす、ダム建設の木っ端役人どもは、川に放り投げろ」)
全国的にも有名な作家の野田さんも熊本の川には居たくないのか、四国に移住され、自然保護活動をされながら、今年3月84歳で亡くなった。
「ティラピア」はそもそも食用で白身の部分がとても美味との事。
こんな事を、シロキンさんに会えたら話そうかと思ったが、雑文録で長々と書いたので、もう、何だか会えなくてもよいと思ってきた。