熊本県 八代市 泉町(旧泉村) 五家荘
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雑文録

2022.04.30

山行

4月23日は1日早い (個人的な) 山開きだった。年間を通して通う五家荘の正式な山開きは翌日の4月24日 (日曜) なのだけど、用事もあるので、1日早く山に出かけた。天気予報は雨だが、雨は雨で楽しい。もちろん大雨は別。去年の夏の豪雨でいつも楽しみにしていたハチケン谷が大崩落。秋にトリカブトを期待して林道を辿るに、道の奥でバンバン、ビーンと音が響いて来た。なんだかきな臭い香りがする。谷にコダマする音は崩落した斜面から大きな岩が落ち跳ねる音だった。林道はすでに足の踏み場もない、岩が小山のように積み上がった異様な景色が目の前にひろがる。さすがにこれ以上は無理と引き返した。(引き返す途中で足をするり滑らせ、下手な受け身…右肩を痛め、また整形外科に2か月通院するはめになった) そんな谷の林道が半年経つと、なんと重機の力で見事復活。まるで魔法にかかったように時間は巻き戻された。極端な書き方すれば、林道で自然の道を破壊しながら、自然崩落した林道を修復する繰り返し…となる。

しかし、今年の山の花の開花は1週間遅く、有名な芍薬の花もまだ固いつぼみだった。途中、霧のような雨がさわさわ降り始めた。しわしわ、さわさわ‥‥春の優しい雨に煙る谷。すでに里では散り尽くしたと思っていた山桜が数本、標高の高い五家荘の山では薄く白く咲いていた。足元の岩の上にも花弁が落ちて見上げると山桜の樹が頭の上で笑っている。

最近、気圧の変化で後頭部が痛むし、気分も落ち込む。気になりだしたら、さらに気になる。

気圧の急変は目に見えないけど、頭痛で悩む人も増えたのではないだろうか。僕の脳内の空洞化したドーム(肝心の脳は消えてしまった)の頂上から小人がガラスの細い針を落とし続けてキリキリ痛む。そんな時の薬に頼らない処方箋は山行なのだ。

道のわき岩のくぼみには可憐な「ヒトリシズカ」の群生がある。不思議な形態の花弁でシズカちゃんの、どこに花粉があるのか。「ヒトリシズカ」に咲く、この家族があちこちに満開の花を咲かせている。なんとも可愛らしい仲間だけどがみんな静か。開花期間は短い。

途中で、林道の横の谷を見るに小さな滝があるのに気が付く。道から外れ、崩れそうな坂をいったん降り、川に出、そこから見上げるに、その滝に高度差はなく、横に広く岩が露出している。苔むしている樹々の奥を滝の水はなだらかに流れ落ちている。過去の大きな地滑りで山肌が崩落し下部の岩盤がむき出しになり滝になったようだ。木をつかみながらひぃひぃ、よじ登ると、改めて写真に収めたい景色が広がっていた。ただ足元がゆらゆら、崩れやすいので、安全に写真撮るためにはいろいろ準備してまた訪問せねばならない。そんな企みを一人考え、森の中でほくそ笑む自分を「ヒトリバカカ」とでも名付けよう。

ふと視線の奥に初めて見る花が一輪。「延齢草(えんれいそう)」だと、後で山野草の生き字引 Мさんに教えてもらった。葉からいきなり花が開くような花。

「延齢草(えんれいそう)」はネットで調べるに花が付くまでに10年かかることから延齢 (長生き) という名がついたとのこと。※僕が見たのは「ミヤマエンレイソウ(シロハナエンレイソウ)」。

しかしネット検索するに、茶色の花の延齢草が楽天で販売されているのは不思議(もちろん、ポットに入った養殖物)。

これは縁起が良い。脳内ドームに針が落ちて来る自分が、そんなに長生きは出来ないだろうと思いながらも、運よく見つけた「延齢草」を喜ぶべきか。毒草だけど。

ぶらぶら楽しい「山歩き」。普通の人の倍の時間をかけて京の丈への登山口にたどりつき、山頂へ行く気はないので、雨が激しくなる中、引き返す。背負ったバックが重くなり足元がぬかるみ、林道がせせらぐ川に変わる。

もう少し気温が上がると、雨に濡れるのも、とても楽しくなる。ついさっきまで、うるさいくらいにおしゃべりしていた山の小鳥たちも家に帰ったのだな。また来るよ。スマホに君たちの声は録音させてもらいました。

烏帽子の「しゃくなげ」に元気をもらう。

ぶなのこと。(3月20日)

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