2024.11.24
山行
異常気象の影響だろう。自然も人間もおかしくなってきた。それでも五家荘の錦秋の景色を期待する。
林道が崩落し、ただでさえ離合困難な崖っぷちの、細い道をこの時ばかりはと観光バスが行き来する。さすがに普通の観光バスのサイズでは道自体を通れないので、最近は小型の観光バスを超人的な技術でプロの運転手が操作する。毎年、紅葉の期間限定で、山域一帯が複雑な一方通行の規制となるのだ。今年は紅葉が例年より1週間遅れ、幸運にも一方通行の規制が解除された日に五家荘に向かった。通行規制が解除されたのはともかく、離合も出来ない車道で、両車、向かい合ってもお互いどうしょうもない悲しい景色を今回も目撃する。そう心配している自分も今回は坂道を50メートルバックしなければいけない羽目になる。左は落石で膨らみ、はち切れそうなネットで保護された岩壁。右はぼこぼこのガードレール。そのはるか下に谷が見える。その後どうなったのか…恐怖で思い出せないのだけど。
11月17日、いつもより早い朝飯を食い家を7時に出て山に向かう。まずの目的はしばらく訪れてなかった梅ノ木轟(滝)の吊り橋を越え、2本の滝を撮影する事にした。紅葉越しの滝の写真を一度撮って見たかった。
ところがどうだろう、梅ノ木の吊り橋が怖くて渡れない!ゆらゆらと橋が揺れるだけでも体が危険を感じ、硬くなり前に進まない!さすがに、僕の後ろにはスマホ片手の団体が迫る。奴らの眼前で這いつくばるような醜態は出来ないではないか。写真を撮るふりをして「どうぞどうぞ」と道を譲るがもう無理、吊り橋をあきらめ、他の場所を歩く事にした。
風景の写真も、山野草の写真と同じで、「目が合うと」撮りたくなる。誰も、選ばないような場所でも目が合い、我が琴線に触れる対象があればカメラを構える。なかなか上手く撮れなくてもそれでよい。コンテストに応募する為に写真を撮るわけではないので、結果に満足しなくても良い。その工程が楽しいだけなのだ。
車を走らせ、ふと小さな川の前で車を停め、辺りを物色する。すると、なんでもなさそうな河原に黄色い葉が積み重なって居た。あーこれは良い景色だ。何枚も写真を撮る。紅葉ではなく「ブナの黄葉」に彩られた川が流れている。僕の車を見て、何かありそうだと子供連れの家族が河原に降りて来た。
子供たちもその黄葉の景色の美しさに驚いている。しばらくすると風が吹き、なんと僕らの頭の上に黄色い葉が、カラカラ、バラバラと音を立てて降ってきた。子供たち落ち葉の吹雪に大興奮だった。
山の景色は急変する。あっという間に辺りはガスに包まれ白くなり、小雨が降って来た。残念ながら、もう写真を撮れる状況ではなくなってきた。
ただ小雨の方が、赤や黄の落ち葉の色がしっとりにじんで美しくなるのだ。足元を見るに、一枚一枚色づいた落ち葉で埋め尽くされている。もう今日の写真は中止だ。短い秋の道を、ゆっくり歩いて、辺りを散策して帰る。短い秋だったけど、今日一日、山に来れて、良かった。
一期一会の景色をシャッターで切り取る。また、風が吹くと落ち葉は飛散し、川に落ち流され消えて行く。振り返るとさっきの景色は何処かに消えて、もう見る事が出来ない。愛おしい景色よ。
2024年の秋が終わった。