2018.10.21
山行
五家荘図鑑というタイトルはハッタリである。正式な図鑑と勘違いして見知らぬ人にサイトに来てもらうための姑息な手段である。ホームページを見てもらい、なあんだ、これは図鑑ではないじゃないかと、期待を裏切る、俗に言う炎上商法である。が、なかなかサイトをみる人の数が増えない。と、いうことはそもそも五家荘に関心のある人、図鑑に関心のある人が少ないからではないかと最近自分を慰め言い訳をする。炎上どころか、枯れ葉がくすぶってのろしのような白い煙が一筋立っているように見えなくもない。それで、更に言い訳を考えたのが「極私的」というサブタイトルだ。(極道的ではない)何も誰から補助金もらっているわけなく、すべて自費、自己責任で極私的に勝手にします。
結果、11月に発行予定の五家荘図鑑アナログ版(写真集)では五家荘の花の名前(属、科、目)を表記しないことにした。本気で図鑑にしようと思い写真を撮ると、ピントを全体に合わせ、花だけでなく葉の形も正確に撮る必要がある。つまり、本物の図鑑片手に写真を撮る必要があるのだ。ピントの甘い、イメージ優先の僕の写真は、図鑑には絶対不向きだ。花の名前の検索も読者に一任。更に言えば、山の名前も滝の名前も記載しません。人工的、観光用のつり橋、建築物も写真集には掲載しません。山や森、花の写真で充分でしょう。五家荘がどこにあるのか、ルートも詳しく説明しません。時間通りに事が運ばないのが山の魅力なのです。
半信半疑で、事務所のI君が、「本当に写真集を出すんですか?と真顔で聞く」「もちろん本気と」答えると、「そんなお金どこにあるんですか?」と心配そうだ。「確かにないものは、ない。家猫も一気に3匹増え、合計6匹、彼らの食費も大変なのだが」「僕の葬式で販売し、暴利をむさぼる。みんな同情してたくさん買ってくれるかもしれない」「儲かったとしてもその時、僕は故人なのだがね」「そもそもすでに香典払わされていますから、そりゃあ押し売りですよ」とあきらめ口調のI君。(すでに、手伝わされるのを覚悟している)嗚呼、お金のことを考えると、頭がよけいずきずきするなぁ。(仮病ではない)
五家荘図鑑の写真集の中で、唯一、名前の表記がある標本写真がある。それは僕の事だ。図鑑の標本箱の中で、ガラス越しに、なんとも言えぬ、標本一人。ピンに止められて、山の森羅万象、みんなと一緒に閉じられる人生があれば、こんな嬉しいことはない。
こんなくだらない、あとがき書いて、実は長生きするつもりだが、そればかりは運命。何時どうなるか、わからない事情を脳に抱えて、これから紅葉の五家荘の山歩きのプランを楽しみに考えているのだ。写真に熱中しすぎて道に迷い、落ち葉に埋もれないように。